2026年後半読書日記
【2026 年後半】 ◎2026年7月24日『死の泉』皆川博子 ◎2026年7月18日『トパーズ』(映画) ◎2026年7月18日『少年十字軍』皆川博子 ◎2026年7月14日『歴史学は世界を変えることができるか』松沢裕作 ◎2026年7月13日『荒野のストレンジャー』(映画) ◎2026年7月9日『分断80年』徐台教 ◎2026年7月7日『スリー・キングス』(映画) ◎2026年7月5日『マーニー』(映画) ◎2026年7月4日『たったひとつの雪のかけら』ウン・ヒギョン ◎2026年7月24日『死の泉』皆川博子 ☆☆☆☆カストラートとレーベンスボルン計画 凝りに凝った構成 本書を開くと、ドイツ語の書名と著者ギュンター・フォン・フュルステンベルク、野上晶=訳というページがあらわれ、同訳者によるあとがきと奥付まである。あれれと思って見返すと、著者は皆川博子で最後に本もののあとがきがある。 このような構成の小説は見たことがないが、本書を最後まで読むと「訳者あとがき」の企みがわかるという仕掛け。ただ、これはいささか凝りすぎではないか。 物語はナチス・ドイツが国家的に進めたアーリア人種純血化のための優生学的民族計画「レーベンスボルン」( Lebensborn 生命の泉)の施設で、施設長の医師がポーランドからアーリア人種として拉致した聖歌隊の少年 2 人を男性ソプラノのカストラートとして育てようとするところから始まる。 この医師は言う。 「世界のすべてのよい血は、ドイツに集められるべきだ。我々は、全世界からゲルマンの血を探し出し、奪う。子供は成長し、交配し、種をふやす。三、四十年後には、ドイツ国民の大半は北方系アーリアンに改良される」 このような恐るべき計画が大真面目に実行され、その反面で、ユダヤ人大虐殺だけでなく、ロマの人々(本書では「ツィゴイネル」という蔑称)も 40 万人殺されたとされている。 本書の前半部分はこのレーベンスボルン計画と子どもたちの物語だが、後半ではナチスドイツの敗北から 17 年後の戦後の時代を舞台にレーベンスボルンの子どもたちがどうなったのかが描かれる。 驚くことに、上記の施設長はナチス追及を免れてアメリカで科学者として優遇されて帰国し、やはり優生思想の体現者として...