2026年後半読書日記
【2026 年後半】 ◎2026年7月5日『マーニー』(映画) ◎2026年7月4日『たったひとつの雪のかけら』ウン・ヒギョン ◎2026年7月5日『マーニー』(映画) ☆☆☆☆優位な立場を利用した男性の女性支配に注目 子ども時代のトラウマの記憶を封印し、犯罪を繰り返す女性と、それを知りつつも女性と結婚し、女性のトラウマを解明して救済しようとする男性を描く映画なのだが、現代的な観点で見ると違った見方もできる。 ジョーン・コネリー演じる主人公の男性は女性の犯罪を知る圧倒的に優位な立場で女性に結婚を迫り、精神分析的方法で過去を調べようとする。 これに対し、女性は弱みを握られてやむなく結婚を受け入れるが、実質的な夫婦関係は敢然と拒絶し続け、機会を見て逃げようとまでする。 この優位な立場を利用した男性の支配と、それを拒絶する女性の矜持が実は見どころではないか。 最後はトラウマが劇的に解明されてハッピーエンドで終わるのだが、あくまでも男性視点の救済劇である。 なお、例によって監督のヒッチコックも作品中に登場するが、本作では最初のほうである。 ◎2026年7月4日『たったひとつの雪のかけら』ウン・ヒギョン ☆☆☆時間と風景の中の一コマとして切り取られた人々の日常 『「なむ」の来歴』をレビューしたついでに、その著者である斎藤真理子の詩を表題にした本書も読んでみた。 表題の短編を入れて 6 編の連作短編集で、注意して読むと登場人物の関わりが見えてくるのだが、その関わりが全く偶然のもので、物語のストーリー展開にまったく影響していない。これは驚くべき構成で、おそらく意図的なものだろう。訳者のあとがきによると、冷笑、孤独に加えて偶然が「作家が魂をこめて描写してきた人生の本質のうちの一つ」とのこと。 このうち、孤独について表題作では次のように書かれている。 「孤独な人について人々はいつも誤解している。彼らは強くもなければ、すさんでいるわけでもなく、一人でいることなぞまったく好きじゃない。そして一人じゃなかったとしても、人はいつも自分だけの孤独を抱えている。」 最後の『金星女』が全体を俯瞰するような作品だが、時代は日本植民地時代の末期から 21 世紀の初めころまでで、ソウル郊...