2025年前半読書日記
【2025 年前半】 ◎2025年1月20日『ベートーヴェン《第九》の世界』小宮正安 ◎2025年1月17日『新訳 モンテ・クリスト伯 5』アレクサンドル・デュマ ◎2025年1月15日『新訳 モンテ・クリスト伯 4』アレクサンドル・デュマ ◎2025年1月13日『新訳 モンテ・クリスト伯 3』アレクサンドル・デュマ ◎2025年1月9日『新訳 モンテ・クリスト伯 2』アレクサンドル・デュマ ◎2025年1月5日『新訳 モンテ・クリスト伯 1』アレクサンドル・デュマ ◎2025年1月2日『一場の夢と消え』松井今朝子 ◎2025年1月20日『ベートーヴェン《第九》の世界』小宮正安 ☆☆☆「第九」の成立史と演奏史は興味深いが・・・ あの第九交響曲について、第 4 楽章の歌詞がシラーの「歓喜に寄す」の元の詩からどう変容したかを詳細に解説し、その演奏史と受容史について概説している。 著者によると、シラーの元の詩はフランス革命より前の 1785 年に印刷され、ベートーヴェンは 1792 年ころにはこの詩に曲を付ける構想を抱いていたという。元の詩は「疾風怒濤 Sturm und Drang 」時代の革命を希求する激烈な内容であったが、フランス革命とナポレオン時代の終焉を経て、シラー自身が激烈さを抑えて改訂し、第九交響曲はその改訂版によるものとなった。第九の歌詞が友愛と平和を希求するものとなっているのはそのためである。 著者は、シラーの詩と第 9 の歌詞を原文を含め全文引用してその異同を対比しているが、できればポイントを小さくしても上下対比形式にして見やすくしてもらいたかった。 演奏史では、ウィーンの初演時に合唱団を舞台下に配してその前でベートーヴェンが指揮をし、オケはコンマスが指揮したというのが興味深い。ベートーヴェンは全聾ではなく指揮をしており、拍手が聞こえなかったというエピソードは秘書シンドラーの創作だったという。 こうした第九の歌詞の成立史と、第 1 楽章から第 4 楽章までの音楽的構造分析は興味深く、第 9 を聞く上でも参考になるのだが、その他の解説がシニカルにすぎるように感じる。 あとがきを見ると、著者は「努力と闘いの人」というベートーヴェンのイメージに疑問を呈し、本文中でも「...